こんにちは、ナビセブ編集部です。Cebuと聞くと、多くの人はビーチ、リゾート、英語留学、IT企業などを思い浮かべます。しかし、Cebu島西部のBalambanには、巨大な船を造り、世界へ送り出している工業地帯があります。
ここで建造されているのは、小型の観光船だけではありません。全長100メートルを超える高速フェリーや、貨物を運ぶ商船なども造られています。Balambanの造船業は、Cebuの雇用、輸出、技術者育成を支える重要な産業です。
この記事では、Balambanの造船業がどれほど大きいのかを、公式情報をもとに見ていきます。
結論
| 項目 | 確認できる規模 |
|---|---|
| West Cebu Estate | 540ヘクタール |
| 造船産業の歴史 | 30年以上 |
| THICIの雇用 | 直接雇用・協力会社を含め約10,000人 |
| Austalの大型組立施設 | 最大120メートル級の船舶に対応 |
| Cebuで建造された大型アルミ船 | 全長115メートル |
| Austalの船舶修理実績 | 2022年開始後、10隻以上 |
| THICIの太陽光発電計画 | 合計3メガワット |
Balambanは、単に造船所が一つある町ではありません。造船会社、部品会社、物流、倉庫、技術者、協力会社が集まる、Cebu最大級の重工業拠点です。
Balambanの造船所はどこにある?
Balambanは、Cebu島の西海岸にある自治体です。Cebu Cityから見ると、山を越えた反対側に位置しています。造船業の中心になっているのが、West Cebu Estateです。Aboitiz Economic Estatesの2026年3月の発表によると、West Cebu Estateは540ヘクタールのPEZA登録経済特区です。
敷地内には工業用地だけでなく、港湾設備や物流に必要なインフラも整備されています。540ヘクタールは、東京ドーム約115個分に相当する広さです。ただし、そのすべてが造船所として使われているわけではありません。製造業、倉庫、物流施設なども含めた経済特区全体の面積です。
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なぜBalambanで船を造るのか?
大きな船を造るためには、広い土地だけでは足りません。建造した船を海へ出せる海岸、重量物を運ぶ設備、部品を保管する場所、電力、道路、熟練した作業員が必要です。Balambanには、造船業に適した条件がそろっています。
| 必要な条件 | Balambanの特徴 |
|---|---|
| 広い工業用地 | 大型船の組立場所を確保できる |
| 海に面した立地 | 完成した船を直接進水させられる |
| 港湾設備 | 大型部品や資材を搬入できる |
| PEZA経済特区 | 輸出型製造業が進出しやすい |
| 技術者と技能労働者 | 30年以上の造船経験が蓄積されている |
| 関連企業 | 部品、加工、物流、倉庫会社が集まりやすい |
造船業は、工場の建物だけを別の場所へ移せば続けられる産業ではありません。長期間かけて形成された人材、設備、港、協力会社の集積が必要です。これが、BalambanがCebuの造船拠点であり続ける大きな理由です。
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Balambanを代表する2つの造船会社
Tsuneishi Heavy Industries (Cebu), Inc.
Tsuneishi Heavy Industries (Cebu), Inc.、通称THICIは、日本の常石グループとAboitizによって設立された造船会社です。Balambanで中型商船を中心に建造し、世界各地の船主へ引き渡しています。
主な業務は次のとおりです。
- 船舶の建造
- 船舶の修理
- 船舶用艤装品の製造
- エンジニアリング
- 鋼材加工
PEZAが2024年に公表した情報では、THICIの雇用は創業初期の約300人から、直接雇用と協力会社を合わせて約10,000人へ拡大したとされています。この約10,000人は、Balamban全体の造船関連雇用者数ではなく、THICIに関係する直接雇用者と協力会社の人員を合わせた数字です。
Austal Philippines
Austal Philippinesは、オーストラリアの造船会社Austalのフィリピン拠点です。Balambanでは、主にアルミニウム製の高速フェリーや商業船などを建造しています。公式情報によると、Balambanの施設には次の設備があります。
| 設備 | 規模 |
|---|---|
| 中型製造ベイ | 50メートル×24メートル、4区画 |
| 大型組立ベイ | 120メートル×43メートル |
| 組立可能な船舶 | 最大約120メートル |
| スリップウェイ | 全長約85メートルまで対応 |
| 浮きドック | 条件により全長約115メートルまで対応 |
Austal Philippinesは2022年に船舶修理サービスを開始し、その後10隻を超える船の修理を行っています。つまりBalambanは、新しい船を造るだけでなく、完成後の整備や修理にも対応する拠点になっています。
Cebuで全長115メートルの船が造られた
Balambanの造船技術を象徴する船の一つが「Express 5」です。Express 5は、デンマークのMolslinjen向けに建造された全長115メートルの高速フェリーで、2023年に引き渡されました。
Austalによると、完成当時は次の記録を持つ船でした。
- フィリピンで建造された最大のアルミニウム製車両・旅客フェリー
- Austalの造船所で建造された最大のアルミニウム船
アルミニウム船は、鋼鉄製の船より軽量化しやすい一方で、大型化には高度な溶接技術と精密な設計が求められます。全長115メートルの船をBalambanで完成させたことは、Cebuの造船技術が国際的な大型プロジェクトに対応できることを示しています。
造船所ではどのような人が働いている?
船は、溶接工だけで造られるものではありません。一隻の船を完成させるまでに、多くの職種が関わります。
| 分野 | 主な仕事 |
|---|---|
| 設計 | 船舶設計、構造計算、配管設計 |
| 船体製造 | 切断、曲げ加工、溶接、組立 |
| 艤装 | エンジン、配管、電気設備の設置 |
| 塗装 | 防錆処理、船体塗装 |
| 品質管理 | 溶接や部品の検査 |
| 安全管理 | 作業手順、保護具、事故防止の管理 |
| 調達 | 鋼材、機械、部品の購入 |
| 物流 | 資材の保管と運搬 |
| 管理 | 人事、経理、輸出書類、顧客対応 |
このほかにも、造船所へ人を運ぶバス、食堂、下宿、修理業者、資材販売店など、多くの地域ビジネスが造船業を支えています。造船所の雇用効果は、造船所の門の中だけにとどまりません。
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一隻の船はどのように造られる?
船の種類や大きさによって異なりますが、基本的な流れは次のようになります。
1.設計する
船主の用途に合わせて、船体、客室、貨物スペース、エンジン、電気系統などを設計します。
2.材料を加工する
鋼板やアルミニウム材を設計図に合わせて切断し、曲げ加工を行います。
3.ブロックを造る
船を複数の大きな区画に分け、それぞれを別々に組み立てます。
4.ブロックを接合する
完成した区画を大型設備で移動させ、一つの船体に接合します。
5.設備を取り付ける
エンジン、配管、電気設備、航海装置、客室設備などを設置します。
6.進水・試運転を行う
船を海へ移し、速度、操縦性、安全設備、エンジンなどを確認します。
7.船主へ引き渡す
検査に合格した船は、国内外の船主へ引き渡されます。大型船の場合、契約から完成まで数年かかることもあります。
造船業はBalambanの町をどう変えた?

Aboitiz Economic Estatesは、West Cebu Estateと造船業の発展が、Balambanを農業中心の地域から工業都市へ変化させたと説明しています。造船業の拡大によって生まれた変化には、次のようなものがあります。
- 技術職と製造職の増加
- 周辺自治体からの通勤者の増加
- 住宅や下宿の需要拡大
- 飲食店や小売店の増加
- 物流・倉庫業の発展
- 職業訓練を受けた人材の蓄積
- 自治体の税収と経済活動の拡大
一方で、特定の大企業や輸出需要への依存、通勤時の交通、住宅需要の増加など、工業化に伴う課題もあります。「大きな造船所がある」というだけでなく、町の働き方や生活そのものが造船業を中心に変化してきたのです。
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造船所でも環境対応が進んでいる
造船業は、大量の電力や資材を必要とする産業です。そのため、環境負荷をどのように減らすかも重要になっています。THICIは、Balambanの施設で合計3メガワットの屋上太陽光発電設備を導入する計画を進めています。
| 段階 | 発電規模 | 状況 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 1.1メガワット | 2025年7月完成 |
| 第2段階 | 1.9メガワット | 2026年完成予定 |
| 合計 | 3メガワット | 計画全体 |
これは造船そのものを無公害にするものではありませんが、工場で使用する電力の一部を再生可能エネルギーへ切り替える取り組みです。
NAVI CEBU DATA CHECK
Balambanの造船業を数字で見るときは、対象と時点を確認する必要があります。
- 約10,000人
PEZAが2024年に示した、THICIの直接雇用と協力会社を含む人員です。
West Cebu Estate全体の現在の就業者数ではありません。 - 540ヘクタール
Aboitiz Economic Estatesが2026年3月時点で公表しているWest Cebu Estate全体の面積です。
造船所だけの面積ではありません。 - 14,000人の新規雇用
West Cebu Estateの拡張に関する発表では、約14,000人の新しい雇用が期待されるとされています。
これは将来予測であり、すでに雇用された人数ではありません。
「現在の人数」と「今後期待される人数」を分けて読むことが大切です。
ナビセブ編集部の結論
Balambanの造船業は、Cebuの地方にある一つの工場という規模ではありません。540ヘクタールの経済特区を基盤に、世界向けの商船や全長100メートルを超える高速フェリーを建造できる産業集積です。
そこでは、溶接工、設計者、電気技術者、品質管理者、物流担当者などが働き、さらに協力会社、交通、住宅、飲食店まで仕事が広がっています。Cebuの経済は、観光と英語留学、BPOだけで動いているわけではありません。
Balambanの海岸では、Cebuの人々が造った船が世界へ向けて出航しています。それが、もう一つの「Cebu at Work」です。
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FAQ
Balambanの造船所を旅行者が見学できますか?
一般の観光施設ではなく、入場管理された工業施設です。通常は自由に入ることができません。見学には会社側の許可や正式な訪問手続きが必要です。
Balambanで造られた船はフィリピン国内だけで使われますか?
いいえ。THICIとAustal Philippinesは、海外の船主向けにも船を建造しています。Balambanの造船業は輸出産業でもあります。
造船所で働くには溶接技術が必要ですか?
溶接は重要な職種の一つですが、設計、電気、配管、塗装、品質管理、安全管理、物流、調達、事務など、さまざまな仕事があります。
Balambanは「フィリピンの造船首都」ですか?
Balambanはフィリピンを代表する造船拠点の一つです。ただし、「造船首都」は行政上の正式な区分ではなく、産業規模を表す呼び方として使われています。
主な確認先
- Aboitiz Economic Estates「West Cebu Estate」
- Philippine Economic Zone Authority(PEZA)
- Tsuneishi Heavy Industries (Cebu), Inc.
- Austal Philippines
- Austal「Express 5」関連発表
※企業の雇用人数、建造実績、施設規模、拡張計画は更新される可能性があります。情報確認日:2026年8月29日