こんにちは、ナビセブ編集部の田口じゅんです。セブに住んで10年以上になります。暮らしとエリアの記事を担当しています。
セブの住宅街では、家の一角を売場にしたサリサリストアをいくつも見かけます。窓口の鉄格子越しに「Pabili po(ください)」と声をかけ、店主に商品を取ってもらう店です。コーヒー1杯分やシャンプー1回分の小袋を、その日に払える金額で売るのがこの商売の中心です。
ナビセブ編集部のまとめ
サリサリストアは「小分け・近所・すぐ買える」で稼ぐ店

サリサリストアは、スーパーより安く売る店ではありません。1回分ずつに分けた商品を、家のすぐそばで、朝から夜まで売る店です。フィリピン統計庁の産業分類にも、サリサリストアだけの区分(47113)があります(2026年10月確認)。利益は小さな粗利の積み重ねで、在庫をどれだけ早く現金に戻せるかで決まります。
「サリサリ」は「いろいろ」という意味

“Sari-sari”はタガログ語で「いろいろな」という意味です。店の棚には、スナック・インスタント麺・缶詰・調味料・石けん・洗剤が並びます。ソフトドリンクやボトルの水、たばこも同じ窓口で買えます。携帯電話のプリペイド残高を足す「ロード」の販売も、店の仕事です。
売れ筋は立地で変わります。学校の前ならお菓子とジュース、工事現場の近くなら冷たい飲み物とたばこ、住宅街の奥なら調味料と洗剤がよく動きます。
フィリピン統計庁(PSA)の産業分類で、サリサリストアは47113です。食料品店(47111)、スーパー(47112)、コンビニ(47114)とは別の番号です(2026年10月確認)。俗称ではなく、統計の上でも一つの業態です。
ティンギ:1回分ずつ売る仕組み

サリサリストアを支えるのが「ティンギ(tingi)」です。大きな包みを開けて、1個・1本・1袋の単位で売ります。
| 商品 | スーパーでの売り方 | サリサリストアでの売り方 |
|---|---|---|
| シャンプー | ボトル | 1回分の小袋(サシェ) |
| インスタントコーヒー | 瓶・大袋 | 1杯分のスティック |
| 卵 | トレー | 1個 |
| たばこ | 1箱 | 1本 |
| 食用油・醤油 | ボトル | 小袋に詰め替えた分 |
大容量のほうが1回あたりは安くなります。ただ、日給で暮らす家庭は大きな包みを買う現金を手元に置けません。ティンギは、客が今日払える金額に合わせて商品を切り分ける売り方です。メーカーもこの売り方に合わせ、最初から1回分のサシェで商品を出しています。
スーパーより高くても近所で買う理由

サリサリストアの値段は、スーパーより少し高いのが普通です。小さな店は大量仕入れの値引きを受けられず、仕入れ先から運ぶ手間も上乗せされるからです。
それでも客が来るのは、スーパーまでのジプニー代と往復の時間がかからないからです。サンダルのまま家を出て、すぐに塩や卵が手に入ります。早朝や夜遅くまで窓口が開いている店も多く、料理の途中で足りなくなった調味料を買いに走る使い方が日常です。
コンビニとの違いは、店の大きさより売り方にあります。コンビニは定価の包装単位で売り、サリサリストアは包みを開けて1回分で売ります。
仕入れ:在庫は小さく、回転は速く

仕入れ先は店ごとに違います。近くのスーパーや卸売店で買う店、公設市場の周りの問屋を使う店、メーカーの配送担当が回ってくる店があります。
売場は家の一部屋より狭く、冷蔵庫を置ける場所も限られます。安く仕入れるために箱買いしても、売れなければ現金が商品のまま眠ります。賞味期限が切れれば、そのまま損です。小さな店ほど、仕入れ値より「何日で売り切れるか」で量を決めます。
冷たい飲み物は電気代とセットの商品

セブで1日中よく売れるのは、冷えた水とソフトドリンクです。店先の冷蔵庫は、窓口に客を呼ぶいちばんの道具です。
その代わり、冷蔵庫の電気代と修理代は毎月かかります。停電が長引けば、冷やした商品は売り時を逃します。同じ1本でも、冷えた商品のほうが店の手間はかかるのです。
利益とウタン(つけ払い)

客が絶えない店でも、手元に残るお金は多くありません。1つ数ペソの商品が中心なので、粗利は1回の買い物で数ペソずつしか積み上がりません。そこから電気代・売れ残り・破損・仕入れに行く交通費が引かれます。
近所の店では、「ウタン(utang)」と呼ぶつけ払いもできます。顔なじみの客に商品を先に渡し、給料日にまとめて払ってもらう方法です。ノートに名前と金額を書き、前の分を払うまで次を貸さない店もあれば、つけ払いを一切しない店もあります。商品を渡した時点で在庫は減り、現金はまだ入りません。払われなければ、その分がそのまま店の損です。
| お金が出ていくところ | 中身 |
|---|---|
| 仕入れ | 商品代と、仕入れ先までの交通費 |
| 設備 | 冷蔵庫・棚・窓口の鉄格子 |
| 電気代 | 冷蔵庫と夜の照明 |
| ロス | 売れ残り・賞味期限切れ・破損 |
| つけ払い | 回収できなかったウタン |
家族が交代で店番をする店が多いのは、住まいと売場がつながっているからです。家事をしながら窓口に立てるので、人を雇わずに長い営業時間を回せます。
GCashとロードで増えた仕事

フィリピン中央銀行(BSP)の発表では、2024年に小売の支払い件数の57.4%、金額の59%が電子決済でした。2023年は件数で52.8%でした(2025年7月発表、2026年10月確認)。
サリサリストアにも、窓口にGCashのQRコードを貼る店が増えました。商品代をQRで払えるほか、現金を渡してGCashに入金する「キャッシュイン」を扱う店もあります。逆に現金を受け取る「キャッシュアウト」に応じる店もあります。携帯のロード販売とあわせると、今の店は近所の小さな金融窓口でもあるのです。
QRで払えることと、キャッシュイン・アウトができることは別のサービスです。手数料も店ごとに決めています。
数字で見るサリサリストア

サリサリストアが全国に何店あるかを示す公式の数字は、統計庁の資料にありません(2026年10月確認)。家族だけで回す店の多くが、事業所の統計に入らないためです。
| 資料 | 数字 | 読み方 |
|---|---|---|
| PSA 2022年ASPBI(卸売・小売・修理) | 正規部門の事業所12万5,257か所(速報、前年12万1,880か所) | 従業員10人未満の個人の単独店は対象外。サリサリストアの大半は入らない |
| NIQ(2024年10月発表) | 伝統的小売はフィリピンの日用品販売額の約3分の1。2024年4〜6月の伸びは前年比+26% | サリサリストアを含む小さな店全体の数字 |
| 舟橋豊子氏の講演(2023年2月) | 伝統的小売の店舗は全国に約90万店(2021年) | 研究者による推計で、統計庁の数字ではない |
小さな店は、日用品メーカーにとって売上の柱です。サシェ商品が今も主力なのは、この販売網があるからです。
サリサリストアを開くには

屋号をつけて商売をするときは、貿易産業省(DTI)の屋号登録(BNRS)をオンラインで行います。登録料は商売の範囲で決まり、バランガイ(地区)内だけなら₱200です(2026年10月確認)。
| 登録する範囲 | 登録料 |
|---|---|
| バランガイ | ₱200 |
| 市・町 | ₱500 |
| 地方 | ₱1,000 |
| 全国 | ₱2,000 |
どの範囲でも印紙税₱30が加わり、登録は5年間有効です(DTI BNRS、2026年10月確認)。このあと市役所の営業許可やバランガイの許可が要りますが、窓口と費用は自治体ごとに違います。
旅行者・留学生がサリサリストアを使うとき

旅行者でも普通に買えます。窓口から欲しい物を指さし、「Pabili po(ください)」と言えば通じます。英語で「One water, please」でも問題ありません。
- 小銭と₱20・₱50の紙幣を用意する。₱1,000札はおつりがなく断られることがある
- 冷えた飲み物は「cold」と伝える。常温しかない日もある
- GCashで払うときは、QRを読む前に「GCash OK?」と聞く
- つけ払いは近所の常連向けの仕組みで、旅行者が頼むものではない
語学学校の寮のまわりにもたいていあり、夜に水や菓子を買い足す場所として留学生がよく使います。
👨💻 ナビセブ編集部
ナビセブ編集部の結論

サリサリストアは、モールやコンビニが増えても消えていません。客が今日払える額に商品を切り分け、歩いて1分の場所で売る役割は、大きな店には代われないからです。電子決済が広がった今は、ロードやキャッシュインの窓口も兼ねています。セブの住宅街を歩くときは、窓口の冷蔵庫とQRの札を見てください。その店が近所でどんな役割を担っているかが分かります。
よくある質問

サリサリストアはコンビニと同じですか?
違います。多くは住まいの一角を使う個人の店で、包みを開けて1回分ずつ売ります。統計の分類でもコンビニ(47114)とは別の区分(47113)です。
ティンギ(tingi)とは何ですか?
商品を1個・1本・1回分の小袋に分けて売ることです。客は大きな包みを買う現金がなくても、その日に要る分だけ買えます。
スーパーより安いですか?
同じ商品なら、たいていスーパーのほうが安くなります。サリサリストアは交通費と移動時間がかからない分で選ばれています。
旅行者もGCashで払えますか?
QRを貼っている店なら払えます。旅行者向けのGCashは使える条件が限られるので、小銭を持っておくのが確実です。
サリサリストアを開くのにいくらかかりますか?
DTIの屋号登録はバランガイ内の商売なら₱200に印紙税₱30です(2026年10月確認)。営業許可の費用は市や町で違います。
最後に

この記事の数字は2026年10月に、PSA・BSP・DTIの公開資料で確認しました。商品の値段、営業時間、GCashの扱いは店ごとに違います。買う前に窓口で値段と支払い方法を聞いてください。



