こんにちは、ナビセブ編集部の田口じゅんです。セブに住んで10年以上になります。暮らしとエリアの記事を担当しています。
セブを歩いていると、住宅地や市場の近くで「Barangay Hall」と書かれた建物を見かけます。市役所(City Hall)より小さく、日本人旅行者が中へ入る機会は多くありません。
しかし、セブアノにとってバランガイホールは、証明書を受け取り、地域の問題を相談し、住民同士のトラブルを話し合い、災害情報を確認する身近な行政窓口です。今回は、バランガイホールが実際に何をしているのかを、フィリピンの法律とセブの行政情報から整理します。
バランガイホールとは何?

バランガイホールは、バランガイ政府の事務所です。バランガイ・キャプテン、バランガイ議会、書記、会計担当などが、地域の行政を行う拠点として使います。
日本の町内会館に近い雰囲気がありますが、バランガイは正式な地方自治体(Local Government Unit)です。Local Government Code of 1991(地方自治法)では、バランガイ・キャプテンに次のような役割を定めています。
- バランガイ内で法律と条例を実施する
- 地域の治安を維持する
- 災害や緊急時の対応組織をつくる
- バランガイの予算を作成する
- 環境保護に関する法律を実施する
- バランガイの紛争解決制度(Barangay Justice System)を運営する
- 住民に基本的なサービスを届ける
バランガイホールは、これらの仕事を地域で実行するための中心になります。
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バランガイホールの主な仕事
バランガイホールの業務は、バランガイの規模、予算、市や町の制度によって異なります。しかし、主な仕事は次の6つに整理できます。
| 分野 | 主な業務 |
|---|---|
| 証明書 | Barangay Clearance、Certificate of Residencyなどの発行 |
| 住民相談 | 近隣問題、地域の苦情、行政サービスの案内 |
| 紛争調整 | 住民間の軽微なトラブルを話し合いで解決 |
| 安全 | バランガイ・タノッドによる巡回、地域の治安維持 |
| 災害対応 | 避難、被害確認、救援物資、地域への情報伝達 |
| 地域運営 | 清掃、行事、会議、予算、公共施設の管理 |
すべてをバランガイホールだけで解決するわけではありません。内容によって、市役所、警察、消防署、保健センター、DSWDなどへ案内されます。
バランガイホールで発行される主な証明書

バランガイホールでは、住民の居住状況や地域内での活動を確認する書類が発行されます。代表的なものは次のとおりです。
Barangay Clearance
申請者がバランガイ内で問題なく生活または活動していることを確認するために使われる書類です。就職、各種申請、許可手続きなどで求められる場合があります。必要書類、料金、有効期間、発行条件はバランガイと使用目的によって異なります。
Certificate of Residency
申請者がそのバランガイに居住していることを証明する書類です。学校、行政手続き、身分証明、住所確認などに使われます。申請時に有効なID、住所を証明する書類、居住期間の確認などを求められることがあります。
Certificate of Indigency
低所得などの理由で支援を必要とする住民であることを証明する書類です。医療、教育、社会福祉などの支援申請に使われます。単に申請すれば必ず発行される書類ではなく、バランガイによる確認が必要です。
First-Time Jobseeker Certification
初めて就職活動をする住民であることを証明する書類です。Republic Act No.11261により、条件を満たす初めての求職者(First-Time Jobseeker)は、就職に必要なBarangay Clearanceなどを無料で取得できます。
DILGによると、対象者は原則として、そのバランガイに6か月以上居住している初めての求職者です。2025年1月から7月までに、フィリピン全国で387,329人が無料のバランガイの証明書(Barangay Certification)を受け取りました。
事業用のBarangay Clearanceはどこで取る?
以前は、事業を始める際にバランガイホールでBarangay Clearanceを取得し、その後、市役所や町役場で営業許可(Business Permit)を申請する流れが一般的でした。
しかし、Republic Act No.11032により、事業に関係するBarangay Clearanceの申請、発行、料金徴収は、原則として市または町の営業許可の手続きに統合することになっています。
セブ市の営業許可の案内でも、Barangay Clearanceと公式領収書(Official Receipt)が必要書類として示されています。ただし、実際の手順は新規申請、更新、事業所在地、市によって異なります。
事業を始める場合は、最初に事業所在地の市または町のBusiness Permit and Licensing Officeで、最新の手順を確認する必要があります。
住民同士のトラブルもバランガイホールで扱う

バランガイホールの重要な役割の一つが、Katarungang Pambarangayです。これは、地域内の紛争を裁判に持ち込む前に、バランガイで話し合って解決する制度です。Punong Barangay、一般にバランガイ・キャプテンと呼ばれる責任者が、最初の調停を行います。
解決しない場合は、LuponまたはPangkatと呼ばれる地域の調停組織による和解の手続きへ進みます。各バランガイのLupong Tagapamayapaは、バランガイ・キャプテンを委員長とし、10人から20人の委員で構成されます。
対象になる可能性があるのは、次のような地域内のトラブルです。
- 近隣住民同士の争い
- 騒音や境界に関する問題
- 金銭の貸し借り
- 軽微な損害や口論
- 一部の民事・刑事上の問題
一方、重大犯罪、政府が当事者となる問題、異なる市や町の住民同士の争いなど、バランガイで扱えないケースもあります。バランガイホールは裁判所でも警察署でもありません。
緊急性や危険がある場合は、バランガイでの話し合いより、警察など適切な機関への連絡が優先されます。
バランガイ・タノッドは警察と何が違う?
バランガイ・タノッドは、バランガイ内の安全を支える地域の治安要員(Community Peace and Security Officer)です。地域の巡回、行事の警備、交通整理、夜間の見守り、災害時の避難誘導などを行います。
しかし、Philippine National Police(PNP)と同じ組織ではありません。重大犯罪の捜査や本格的な警察活動はPNPが担当します。バランガイ・タノッドは、地域の状況をよく知り、問題を早く発見してバランガイ・キャプテンや警察につなぐ役割を持っています。
災害が起きたときのバランガイホール

台風、洪水、火災、地震などが発生したとき、バランガイホールは地域の災害対応拠点になります。主な役割は次のとおりです。
- 危険地域への注意喚起
- 避難場所の案内
- 高齢者や子どもなど避難支援が必要な住民の確認
- 被害状況の記録
- 救援物資の受け入れと配布
- 市または町のDRRMOとの連絡
バランガイホール自体が避難所になる場合もありますが、バスケットボールコート、学校、体育館、礼拝堂など別の施設が指定される場合もあります。旅行者や外国人居住者も、台風や地震の後は、自分が滞在しているバランガイの公式Facebook、市のDRRMO、宿泊施設からの案内を確認する必要があります。
バランガイ総会には住民が参加できる
バランガイには、バランガイ総会(Barangay Assembly)という住民会議があります。Local Government Codeでは、バランガイ総会を少なくとも年2回開催することが定められています。
会議では、バランガイ議会の活動、財政、地域の問題などが住民へ報告されます。バランガイの住民は、地域に必要な施策や条例について意見を伝えることができます。バランガイは行政の最小単位ですが、住民が地域運営に直接関わる仕組みも持っています。
バランガイホールへ行く前に確認すること
バランガイホールの受付時間、必要書類、料金、発行日数は全国一律ではありません。手続きの前に、次の項目を確認してください。
- 自分の住所を管轄するバランガイか
- 取得する証明書の正式名称
- 使用目的
- 必要なID
- 住所を証明する書類
- 証明写真の有無
- 料金
- 受付時間
- 当日発行か後日受け取りか
政府窓口では、Citizen’s Charter(市民憲章)に手続き、必要書類、料金、処理時間、担当窓口を表示することが求められています。不明な料金を口頭だけで支払わず、公式領収書(Official Receipt)を受け取ることも重要です。
外国人もバランガイホールを利用できる?

外国人でも、そのバランガイに居住していれば、住所確認や地域の相談などでバランガイホールを利用する場合があります。ただし、外国人に発行できる証明書や必要書類は、申請目的とバランガイの確認によって異なります。
一般的には、次のような書類を求められる可能性があります。
- パスポート
- ACR I-Card
- 賃貸契約書
- コンドミニアムや分譲住宅地(Subdivision)の居住証明
- 公共料金の請求書
- 家主からの証明
旅行者が短期間滞在しているだけの場合、住民向けの証明書を取得できるとは限りません。必要な手続きがある場合は、滞在先の管理者とバランガイホールの両方に確認してください。
ナビセブ編集部が見てきたバランガイホール
セブに長く住んでいると、バランガイホールは書類を発行する場所だけではないことが分かります。フィエスタの準備、バスケットボール大会、道路清掃、ゴミ回収、住民同士の相談、台風後の支援まで、地域で起きるさまざまなことに関わっています。
しかし、すべてのバランガイホールが同じ規模、同じ設備、同じ受付方法ではありません。人口が数万人いる都市部のバランガイと、山側や離島の小さなバランガイでは、職員数も予算も地域が抱える問題も違います。
市役所だけを見ても、セブアノの日常に最も近い行政は見えてきません。バランガイホールを見ると、セブが小さなコミュニティの積み重ねで動いていることが分かります。
最後に
- バランガイホールはバランガイ政府の行政拠点
- 証明書の発行、住民相談、地域の安全、災害対応などを行う
- 住民間の一部のトラブルはKatarungang Pambarangayで調整する
- Lupon(調停組織)はバランガイ・キャプテンと10人から20人の委員で構成される
- バランガイ総会は少なくとも年2回開催される
- 条件を満たす初めての求職者(First-Time Jobseeker)の就職用書類は無料
- 受付時間、料金、必要書類はバランガイによって異なる
- 犯罪、火災、重病などの緊急事態は専門機関への連絡を優先する
よくある質問
バランガイホールと市役所は同じですか?
違います。バランガイホールはバランガイ単位、市役所は市全体を担当します。
Barangay Clearanceの料金はいくらですか?
使用目的、バランガイ、市の条例によって異なります。Citizen’s Charterまたは窓口で最新料金を確認し、支払い時には公式領収書(Official Receipt)を受け取ってください。
旅行者もバランガイホールへ相談できますか?
地域内で困ったことがあれば相談できます。ただし、バランガイホールで対応できない内容は、警察、病院、市役所などへ案内されます。
バランガイホールは24時間開いていますか?
通常の行政窓口の受付時間はバランガイごとに異なります。タノッドや緊急対応の体制があっても、証明書の発行窓口が24時間利用できるわけではありません。
参照した一次情報
- Lawphil|Republic Act No.7160 Local Government Code of 1991
- DILG|Katarungang Pambarangay FAQ
- Lawphil|Republic Act No.11032 Ease of Doing Business Act
- Lawphil|Republic Act No.11261 First Time Jobseekers Assistance Act
- DILG|First-Time Jobseeker Barangay Certification 2025
- Cebu City Government|Business Permit Application
- Cebu City Government|Official Website
情報確認日:2026年8月29日




