こんにちは、ナビセブ編集部の田口じゅんです。セブに住んで10年以上になります。暮らしとエリアの記事を担当しています。
セブで長く生活していると、Family Firstという言葉を聞くことがあります。家族を最優先にする。
日本語にすると、それだけの意味に見えます。しかし、セブの生活で見るFamily Firstは、休日を家族と過ごすという話だけではありません。親の医療費を支払う。兄弟姉妹の学費を助ける。子どもの面倒を親族が見る。
海外や別の都市で働き、収入を故郷へ送る。緊急時には仕事より家族の対応を優先する。このような行動まで含まれます。家族のつながりは、生活を支える大きな力です。しかし、同時に、収入のある人へ責任が集中したり、自分の希望より家族の事情を優先したりする負担もあります。
セブのFamily Firstを理解するには、温かさだけでなく、その責任まで見る必要があります。
ナビセブ編集部のまとめ
セブでいうFamily Firstは、家族を大切に思う感情だけではありません。
生活の中で、家族が次のような役割を持つことです。
| 場面 | 家族の役割 |
|---|---|
| 育児 | 祖父母や親族が子どもを見る |
| 教育 | 兄弟姉妹が学費を助ける |
| 医療 | 医療費、通院、看病を分担する |
| 仕事 | 家族のために別の都市や海外で働く |
| 住居 | 親族と同居し、住居費を分ける |
| 緊急時 | 災害、病気、失業時に助け合う |
| お祝い | 誕生日、卒業、クリスマスを一緒に祝う |
| 人生の決定 | 就職、結婚、移住を家族と相談する |
しかし、すべてのセブアノが同じ考えを持っているわけではありません。Family Firstは国民性ではなく、家族が生活を支える仕組みとして表れることがあります。
家族は感情だけでなく生活の基盤
フィリピンの1987年憲法は、フィリピンの家族を「国家の基礎」と位置づけています。これは、家族を重視する考え方が、日常会話だけでなく制度上にも表れている例です。中部ビサヤ地方(Central Visayas)では、2020年の平均世帯人数が4.1人でした。
全国の平均世帯人数は、2024年に3.8人まで減少しています。しかし、同じ家に住む人数が減っても、家族関係が弱くなったとは限りません。別々に住みながら、
- 送金する
- 子どもを預ける
- 毎日メッセージを送る
- 休日に集まる
- 緊急時に助ける
という関係が続く家庭もあります。同居している人だけが家族ではありません。
親族まで含まれる
日本語の「家族」から、親と子だけを想像する人もいます。しかし、セブの生活では、
- 祖父母
- おば
- おじ
- いとこ
- 義理の家族
- 代父母(ゴッドペアレント)
などが、日常の助け合いに関わることがあります。親が仕事へ行っている間、祖母やおばが子どもを見る。いとこが学校への送迎を手伝う。家族行事では複数の家庭が料理を持ち寄る。このような親族を含めた家族の関係があります。
ただし、親族が多いから必ず仲が良いとは限りません。家族内に対立や距離があることも、日本と同じです。
家族のために働くという考え方
セブで仕事について話していると、I’m doing this for my family.という言葉を聞くことがあります。働く目的が、自分の生活だけではない場合があります。
- 子どもの学費
- 親の薬代
- 兄弟姉妹の生活費
- 家の修理
- 家族の借金
- 故郷への送金
を支えるために働く人もいます。海外で働くフィリピン人からの送金は、この関係を数字でも示しています。Bangko Sentral ng Pilipinasによると、2024年の銀行経由の現金送金額は約344.9億米ドルでした。
すべてがセブの家族への送金ではありません。しかし、離れて働く人の収入が、フィリピン国内の家族を支える大きな仕組みになっていることは分かります。
家族が教育を支える
一人の兄や姉が働き、弟や妹の学費を助けることがあります。大学を卒業した弟や妹が就職した後、別の家族を助けることもあります。この関係は、正式な契約ではありません。しかし、「自分も助けてもらったから、次は自分が助ける」という意識につながる場合があります。
教育費を家族で支えることは、将来の選択肢を広げます。一方で、支払う側には長期間の負担がかかります。家族を助けることと、自分の貯蓄や将来を守ることの間で悩む人もいます。
子育ても家族で支える

共働きの家庭では、祖父母や親族が育児を助けることがあります。保育施設だけに頼らず、家族の予定を組み合わせて子どもを見る方法です。
| 家族 | 担うことがある役割 |
|---|---|
| 祖父母 | 日中の見守り、食事 |
| おば・おじ | 送迎、緊急時の対応 |
| 年上のきょうだい | 留守番、宿題の手伝い |
| いとこ | 遊び相手、学校行事の補助 |
| 親 | 生活費、教育、最終的な判断 |
この助けがあることで、親が働き続けられる家庭があります。しかし、年上の子どもや高齢の祖父母へ責任が集中する場合もあります。家族の助けを当然と考えず、誰がどの負担を担っているのかを見る必要があります。
病気や緊急時にFamily Firstが見える
セブでFamily Firstを強く感じるのは、病気や事故などの緊急時です。家族が病院へ付き添う。親族へ連絡する。治療費を複数人で集める。子どもを別の親族が預かる。仕事を休んで看病する。
公的制度や民間サービスだけで解決できない部分を、家族が支えることがあります。家族のネットワークは大きな安全網です。しかし、家族だけに頼らなければならない状況は、支援できる親族が少ない家庭ほど厳しくなります。
Family Firstの強さは、社会的な支援の不足と切り離して考えることができません。
仕事より家族を優先する場面
家族の病気、葬儀、子どもの学校行事などで、急に休みを希望する人がいます。日本人のマネージャーが、「なぜもっと早く言わなかったのか」と感じることもあります。しかし、緊急事態は事前に予定できません。
一方で、Family Firstと言えば、すべての欠勤や遅刻が認められるわけでもありません。仕事では、
- 何が起きたのか
- 何日必要なのか
- 誰が代わりを担当するのか
- いつ連絡できるのか
- どの仕事を引き継ぐのか
を確認する必要があります。家族への配慮と、仕事上の責任は両立させなければなりません。
家族の意見が進路に影響する
セブでは、就職、転職、海外勤務、結婚、住居などを家族と相談する人がいます。本人にとって良い条件でも、
- 親の介護が必要
- 子どもの学校を変えられない
- 家族と遠く離れる
- 送金額が減る
- 配偶者の仕事がある
という理由で選ばない場合があります。個人のキャリアだけを見れば、不合理に感じるかもしれません。しかし、本人が家族全体の生活を考えているなら、判断の基準が違います。「本人にとって得か」ではなく、「家族全体が続けられるか」で決めている可能性があります。
Family Firstの明るい面

家族を優先する考え方には、生活を支える力があります。
- 孤立しにくい
- 子育てを分担できる
- 緊急時に助けを求められる
- 高齢者と交流できる
- 食事や住居を共有できる
- 子どもが多くの大人と関われる
- 困難を家族全体で乗り越えられる
制度だけでは届かない場面を、家族関係が補うことがあります。セブで災害や病気が起きたとき、親族同士が素早く連絡を取り合う姿から、この強さを感じます。
Family Firstの負担も見る
しかし、家族とのつながりが強いほど、断りにくい依頼が増えることもあります。
- 収入のある人へ送金が集中する
- 親族から借金を頼まれる
- 自分の貯蓄ができない
- 年上の子どもが家事や育児を担う
- 家族の意見で進路が制限される
- 個人的な決定に親族が関わる
- 助けを断ると冷たいと思われる
家族を助けることは大切です。しかし、一人がすべてを背負えば、その人の生活が続かなくなります。Family Firstは、自己犠牲を無制限に求める言葉ではありません。
「フィリピン人は家族思い」と決めつけない
「フィリピン人は日本人より家族を大切にする」という言い方を聞くことがあります。しかし、この比較は単純すぎます。日本人にも家族を大切にする人は多く、セブにも家族と距離を置く人がいます。
違いが見えやすいのは、愛情の量ではありません。家族が、
- お金
- 住居
- 育児
- 医療
- 仕事の選択
- 休日
- 緊急対応
へ、どの程度直接関わるかです。「家族思いの国民性」ではなく、生活の仕組みとして考えるほうが実態に近づきます。
Family Firstが表れる4つの分野
Family Firstが表れる場面を、4つに分けて見ると理解しやすくなります。
| 分野 | 表れる行動 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 時間 | 休日、行事、看病 | 仕事との調整 |
| お金 | 学費、医療費、送金 | 一人への負担集中 |
| 世話・介護 | 育児、介護、送迎 | 担当者の疲労 |
| 人生の決定 | 就職、移住、結婚 | 本人の希望との調整 |
家族を優先したという結果だけでなく、誰が支え、誰が負担したのかまで見ることが大切です。
ナビセブ編集部がセブで学んだFamily First
私がセブで最初に見ていたのは、家族の集まりの多さでした。誕生日、クリスマス、日曜日の食事、ビーチでのファミリーリユニオン。しかし、長く生活するうちに、Family Firstは楽しい行事だけに表れるものではないと分かりました。
親の治療費を支払う人。兄弟姉妹を卒業させるために働く人。子どもの面倒を見る祖父母。家族の生活を支えるために、遠く離れて働く人がいます。Family Firstとは、家族と一緒にいることだけではありません。
離れていても、家族への責任を持ち続けることでもあります。
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ナビセブ編集部の結論
セブのFamily Firstは、家族を好きだという気持ちだけでは説明できません。家族は、育児、教育、医療、住居、送金、緊急時の対応を支える生活のネットワークです。そのネットワークがあるから、困難を乗り越えられる人がいます。
しかし、支える人には時間、費用、責任が集中することもあります。Family Firstを美しい言葉として語るだけでは、その負担が見えません。反対に、仕事より家族を優先する行動だけを見て、無責任だと判断することもできません。
誰を支え、なぜその判断をしたのか。そこまで見ると、セブの家族関係が分かり始めます。セブで暮らして私が学んだFamily Firstとは、家族を何より上に置くという単純な標語ではありません。
家族の生活を、自分の人生の一部として引き受けることです。
よくある質問
セブアノは全員Family Firstですか?
いいえ。家族との関係や価値観には大きな個人差があります。Family Firstをセブアノ全体の性格として決めつけることはできません。
家族には誰まで含まれますか?
親子や配偶者だけでなく、祖父母、兄弟姉妹、おば、おじ、いとこ、義理の家族、代父母などが関わる場合があります。
なぜ海外で働いて家族へ送金する人が多いのですか?
教育、医療、住居、日常生活などを支える目的があります。しかし、渡航理由や送金の使い道は家庭によって異なります。
Family Firstなら仕事を休んでもよいのですか?
家族の緊急事態への配慮は必要です。しかし、連絡、引き継ぎ、休暇制度など、仕事上の責任も確認する必要があります。
Family Firstには問題もありますか?
あります。送金、育児、介護などが特定の人へ集中し、貯蓄や進路へ影響する場合があります。家族の支援と個人の限界を両方考える必要があります。
シリーズまとめ
「家族からセブを理解する」シリーズは、この記事で全10記事が完成です。このシリーズでは、
- セブの家族は何人で暮らしているのか
- 親族を含む家族の範囲
- 代父母(ゴッドペアレント)と代子の関係
- 誕生日を家族で祝う理由
- 家族とお金のつながり
- 海外や別の都市で働く家族
- 聖週間(Holy Week)の日常
- 長く続くクリスマスシーズン
- 家族の休日の過ごし方
- Family Firstの意味
を通して、セブの生活を家族の側から見てきました。家族のつながりは、セブの温かさを作ります。しかし、その内側には、費用、時間、介護、教育、仕事を支える責任もあります。家族を理想化するのでも、古い価値観として否定するのでもなく、生活を動かす仕組みとして見ること。
それが、セブを人の暮らしから理解するための一歩になります。
主な確認資料
- LawPhil|1987 Constitution of the Philippines・Article XV The Family
- Philippine Statistics Authority|2024年の世帯数と平均世帯人数
- Philippine Statistics Authority Central Visayas|2020年の世帯人口と平均世帯人数
- Bangko Sentral ng Pilipinas|Overseas Filipino Cash Remittances
- Philippine Social Science Council|Work-Family Conflict, Stress, and Satisfaction among Dual-Earning Couples
- Philippine Social Science Council|The Filipino Family, Community and Nation
※この記事は、ナビセブ編集部のセブでの長期生活経験と、家族、世帯、送金、仕事と家族の関係に関する公開資料をもとに整理しています。
※家族関係、支援、同居、送金のあり方には大きな個人差があります。セブアノやフィリピン人全体を一つの価値観として分類するものではありません。
情報確認日:2026年8月29日



