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セブにしかいない鳥シロイの声を探す|森で出会うための観察

姿を追う前に10分間止まり、声・下層植生・観察倫理からセブ固有種を探します。

谷口まり(ナビセブ編集部)約12分公開 更新

枝にとまるセブ固有種の黒い鳥シロイ。

谷口まりのアイコン

こんにちは、ナビセブ編集部の谷口まりです。親子でセブに移住しました。観光とグルメの記事を担当しています。

セブの森で、姿の見えない鳥の声が聞こえることがあります。低い場所から響く、豊かで変化のある鳴き声。その声の主が、セブアノ語にSiloyと呼ばれるBlack Shamaかもしれません。Black Shamaは、自然分布ではセブ島だけに生息する固有種です。

しかし、Siloyを探すことは、森の中で鳥を追い回すことではありません。立ち止まり、異なる音を聞き分け、鳥が自分から姿を見せるのを待つ観察です。この記事では、Siloyの特徴と現在の保全状況、セブハナドリとの違い、森の音を聞く方法、希少種を守るための観察ルールを紹介します。

ナビセブ編集部のまとめ

枝にとまる黒い鳥シロイ

固有鳥とは何か
Siloyは、セブ固有鳥と呼ばれます。固有は、ある生物が自然状態では限られた地域にしか分布していないことを意味します。例えば、フィリピン固有ならフィリピンの中だけ、セブ固有なら基本的にセブ島だけに自然分布する生物です。

セブにしかいないということは、セブの森が失われれば、別の国や島の個体群が代わりになることはありません。固有種を観察する旅では、「見つけた」という結果以上に、その鳥が生きられる場所を残すことが重要です。

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セブ固有種Black Shama

緑の葉の間にとまるシロイ

Siloyの英語名はBlack Shama、学名はCopsychus cebuensisです。名前のとおり全身は黒く、尾が比較的長い鳥です。明るい色で目立つ鳥ではないため、暗い林内や密な低木の中では簡単に見失います。

森林の地面に近い場所や、つる植物、低木が複雑に重なる場所で活動します。昆虫などを探していると考えられ、開けた空を長時間飛び続ける鳥ではありません。Siloyを見つけるときは、空や高い枝だけでなく、森の中層から地面に近い場所にも注意します。

しかし、姿より先に存在を知らせることが多いのが、その鳴き声です。Siloyは変化のある声で鳴きます。周囲の鳥の声と混ざるため、最初から「Siloyの声だ」と断定せず、同じ方向から繰り返し聞こえるかを確かめましょう。

Black Shamaの評価はなぜ変わった?
古い旅行記事や野鳥資料では、Black Shamaが絶滅危惧と紹介されていることがあります。しかし、BirdLife Internationalの現在の種のファクトシートでは、IUCNレッドリストのカテゴリーは軽度懸念です。

2018年2月から2020年3月にセブの森林で行われた調査では、研究対象となった範囲の推定個体数が1万1,839羽、推定範囲は9,160~1万5,415羽と報告されました。研究では、成熟した二次林だけでなく、樹種の混在する植林地や二次植生などでもBlack Shamaが確認されています(Bird Conservation International)。

それまで考えられていたより広い場所に、より多くの個体が生息していると分かったことが、評価変更の背景にあります。ただし、軽度懸念は「セブの森林が安全になった」という意味ではありません。Black Shamaはセブだけに分布し、生息地は分断されています。研究者も、残された森林の保護と、森林同士をつなぐ在来樹種の植林が重要だと指摘しています。個体数の推定値には調査方法と対象地域による幅があり、毎年同じ数が保証されているわけでもありません。

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セブハナドリとは別の鳥

森の中のシロイ
  1. 最初の2分
    動かず話さず、自分の足音・衣服・呼吸の音を減らします。
  2. 次の3分
    声が右・左・正面のどこから聞こえるかを確かめます。
  3. 次の3分
    同じ方向から同じ声が繰り返されるかを聞き分けます。
  4. 最後の2分
    声の方向へ進まず、枝・つる・低木の隙間だけを目で探します。

Siloyと一緒に語られることが多いセブ固有種が、セブハナドリです。しかし、2種の保全状況は大きく異なります。セブハナドリは一時、絶滅したと考えられていましたが、1992年にセブの小さな森林で再発見されました。

現在も生息域は極めて狭く、分断され、個体数は減少傾向と評価されています(BirdLife International:セブハナドリ)。そのため、「セブハナドリを必ず撮影できる場所」として森林を紹介することは適切ではありません。目撃を保証せず、正確な出現地点や営巣場所を広めない配慮が必要です。

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森の音を距離で分ける

項目 Black Shama セブハナドリ
学名・現地名 Copsychus cebuensis/Siloy Dicaeum quadricolor/呼称は資料で異なる
主な外見・高さ 全身黒色、長めの尾。林床・下層 雄は複数色。樹冠・花や実の周辺
IUCN評価 軽度懸念 深刻な危機(Critically Endangered)
分布 セブ固有 セブ固有
セブ固有の2種を混同しない

Black Shamaは現在軽度懸念でも、セブ固有種である事実は変わりません。セブハナドリは別種で、目撃保証や正確な営巣地の公開を避ける配慮が必要です。

森へ入ると、鳥、虫、風、人、遠くの車など、多くの音が同時に聞こえます。最初から鳥の種類を当てるのではなく、音を距離ごとに分けてみましょう。

近くの音
自分の足音、服が擦れる音、呼吸、すぐ近くの葉や昆虫の音です。まず自分の動きを止め、近くの雑音を減らします。

中間の音
近くの木や低木から聞こえる鳥、セミ、枝が動く音です。Siloyを探すときは、高い樹冠だけでなく、低木や地面に近い方向にも注意します。

遠くの音
別の尾根から聞こえる鳥、風、農作業、車、犬や鶏の声です。遠くの大きな音だけに意識を奪われず、中間の小さな音へ耳を戻します。

2+3+3+2分で静かに待つ

重なるセブの山なみ

森の中では、歩き続けるより、同じ場所で待つ方が鳥に気づきやすいことがあります。

最初の2分|動かない
足を止め、話さず、自分が出す音を減らします。双眼鏡やカメラはまだ構えません。

次の3分|声の方向を探す
声が右、左、正面のどこから聞こえるかを確認します。正確な距離まで判断する必要はありません。

次の3分|同じ声が繰り返されるか聞く
音の高さ、長さ、回数、間隔を記憶します。別の鳥が続けて鳴いている可能性も考えます。

最後の2分|林内を見る
声がした方向へ歩かず、枝、つる、低木の隙間に動きがないか確認します。鳥が現れなければ、それで終了して構いません。

声を聞けたこと自体が、Siloyの暮らす環境を観察した記録になります。

鳴き声アプリはどう使う?
鳥の識別アプリや録音データは便利ですが、使い方には注意が必要です。森の中で鳴き声をスピーカーから流すと、鳥が別の個体の侵入だと判断する可能性があります。

縄張りを守るために近づいたり、餌を探すのを中断したり、繁殖行動に影響したりすることがあります。BirdLife Australiaは、レクリエーション目的の観察や撮影で鳴き声を再生して鳥を呼ぶこと(コールプレイバック)を支持していません(BirdLife Australia Ethical Birdwatching Guidelines)。声を比較したい場合は、その場でスピーカーから流さず、イヤホンを使用するか、森林を離れてから確認します。

識別アプリの判定も、最終的な事実ではありません。似た声を持つ別種、周囲の雑音、録音状態によって誤判定する可能性があるため、候補として扱いましょう。

鳥を探すときに見る森の形
Siloyを探すときは、鳥だけでなく、生息環境も観察します。

・地面に落ち葉が積もっているか
・低木やつる植物が密にあるか
・林内に暗い場所が残っているか
・森が道路や農地で分断されていないか
・在来樹種と植林された木がどう混ざっているか
・森の端と内部で音がどう変わるか

2023年に発表されたBlack Shamaの分布調査では、セブの約37平方キロメートルにわたるカルスト林の約20地点で生息が確認されました。

一方で、以前の分布地域のうち、調査で確認できなかった場所もありました。つまり、複数の環境を利用できる鳥であっても、森林がどこまでも失われてよいわけではありません。森の面積だけでなく、下層植生、森林同士のつながり、周囲の開発も重要です。

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森・撮影・位置情報を守る

森に覆われた丘

セブの森林には、保護区域、自治体が管理する森林、地域コミュニティが守る場所、私有地があります。地図で緑に見える場所が、自由に入ってよい観光地とは限りません。訪問前に、次の項目を確認してください。
・入域許可が必要か
・現地ガイドが必要か
・雨による道路や歩道への影響
・携帯電話の通信状況
・日没までに戻れる行程か
・飲料水と雨具を持っているか
・保護区独自の撮影ルールがあるか

森林内では、案内のない脇道へ入らず、現地ガイドや森林保護員の指示を優先します。鳥を探すために、木の枝を切る、低木を踏む、巣を動かす行為はできません。

撮影より先に守りたいこと
鳥が離れたら追わない
鳥が警戒して移動した場合は、自分も進むのではなく、止まるか後退します。

スポットライトを向けない
特に夜間、強いライトで鳥を長時間照らすと、休息や行動を妨げる可能性があります。

ドローンを飛ばさない
上空から接近する機体は鳥を驚かせます。保護区での規則や許可の有無も確認してください。

巣を撮らない
巣へ近づけば、親鳥が戻れなくなる可能性があります。人が残した道筋によって、捕食者に位置を知らせる危険もあります。

位置情報を削除する
希少種を撮影した場合は、写真に付いたGPS情報や、投稿する地図の精度を確認します。

見えなかった日も記録になる
Siloyを探しに行っても、姿を見られないことはあります。その日を「何もいなかった」と書くのではなく、次の情報を残してみましょう。
・日付と観察時間
・天気と雨の有無
・森の明るさ
・聞こえた声の数
・声が聞こえた高さと方向
・鳥以外の音
・人や車の通行
・開花または結実していた植物
・観察中に環境がどう変化したか
姿を確認できなかった記録も、同じ場所を再訪したときの比較材料になります。

珍しい鳥の写真1枚より、森全体の変化を継続して残す方が、その場所を深く理解できることがあります。

よくある質問

Siloyはセブへ行けば簡単に見られますか?
生息していても、必ず姿を見せるわけではありません。森林の状態、天候、時間、鳥の行動によって結果は変わります。目撃を保証するツアー表現には注意してください。

Siloyは今も絶滅危惧種ですか?
現在のIUCN評価は軽度懸念です。ただし、古い資料では絶滅危惧と記載されています。評価変更は新しい個体数調査を反映したもので、森林保全が不要になったという意味ではありません。

セブハナドリも同じ場所で見られますか?
生息環境が重なる場合はありますが、セブハナドリは極めて希少です。観察できると断定せず、正確な位置の公開も避けるべきです。

ガイドは必要ですか?

保護区域、私有地、道が不明瞭な森林では必要です。安全だけでなく、地域のルールと保全上の配慮を理解するためにも、認められた現地ガイドを利用してください。

鳴き声を録音してもよいですか?
静かに録音すること自体は観察記録になります。ただし、録音した声をスピーカーから流して鳥を呼び寄せないでください。

まとめ|見つける前に、森の声を聞く
Siloyは、セブだけに自然分布する鳥です。新しい調査によって、以前考えられていたより多くの個体が、二次林や植林地を含む複数の環境で暮らしていることが分かりました。しかし、セブ固有種である事実は変わりません。

Siloyの声が残るためには、鳥だけでなく、落ち葉、昆虫、低木、つる植物、森のつながりを守る必要があります。セブの森へ入ったら、すぐにカメラを構えず、まず10分間だけ動かずに待ってみてください。姿が見えなくても、異なる高さから聞こえる声、葉が動く音、遠くの風に気づけるはずです。

Siloyを探す旅は、珍しい鳥を自分のものにする旅ではありません。セブの森に自分が短時間だけ入らせてもらい、そこに暮らす命の気配を静かに受け取る時間です。
情報確認日:2026年8月31日

Siloyとは?
セブ固有種Black Shamaの現地名
学名は?
Copsychus cebuensis
セブ以外にもいる?
自然分布ではセブ島だけに生息する
体の特徴は?
全身が黒く、比較的長い尾を持つ
どこで暮らす?
森、二次林、低木地、植林地など。特に下層植生が密な環境と関係する
見つける方法は?

姿を探す前に鳴き声を聞き、同じ場所で静かに待つ
絶滅危惧種?
現在のIUCN評価は軽度懸念。ただし、セブ固有種であり、生息地の森林保全は重要
セブハナドリと同じ鳥?
違う。セブハナドリは別種で、深刻な危機(Critically Endangered)に評価されている

Black Shama/セブハナドリの比較
・学名:Copsychus cebuensis/Dicaeum quadricolor
・現地名:Siloy/地域や資料により異なる
・主な外見:全身が黒く、尾が比較的長い/雄は赤、青黒、黄白など複数の色を持つ
・主に見る高さ:林床付近や密な下層植生/樹冠、花や実のある木の周辺
・現在のIUCN評価:軽度懸念/深刻な危機(Critically Endangered)
・分布:セブ固有/セブ固有

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👨‍💻 ナビセブ編集部

ナビセブ編集部の結論

シロイ(Black Shama)は、セブにしかいない固有の鳥で、全身が黒く、尾が比較的長いのが特徴です。セブハナドリとは別の鳥なので、名前を取り違えないようにしましょう。森では歩き続けるより、同じ場所で静かに待つほうが鳥の声に気づきやすくなります。保護区域や私有地もあるため、森のルールを守り、撮影場所の位置情報の扱いにも気をつけることが大切です。

森に覆われたセブの山

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