30日を超える服薬を「商品名」ではなく成分で管理します。「日本で使っている薬は、セブの薬局でも買える?」「3か月分を持って行っても問題ない?」「足りなくなったら、日本から送ってもらえばよい?」と考えることがあります。
長期留学では、薬を持参するだけでなく、滞在期間中に薬を切らさない仕組みが必要です。フィリピンで販売されている薬には、日本と同じ成分のものもあります。しかし、商品名、含有量、剤形、処方箋の必要性が同じとは限りません。
また、日本で正式に処方された薬でも、フィリピンへの持込みが自動的に認められるとは限りません。向精神薬、医療用麻薬、注射薬などは、通常の薬とは異なる確認や書類が必要になる場合があります。
必要なのは、「現地で買えるだろう」という予想ではありません。薬の成分、残日数、書類、保管、再処方までをMedication Planとして準備することです。
要点
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| Generic Name | 薬の一般名・有効成分 |
| Strength | 1錠・1回当たりの含有量 |
| Dose | 1回に使用する量 |
| Frequency | 1日何回、いつ使用するか |
| Quantity | 滞在期間と予備日数に必要な量 |
| Documents | 処方箋の写し、英文の医師書類 |
| Storage | 温度、遮光、冷蔵、携帯方法 |
この7項目が分からない状態で、現地の薬局へ日本の薬の写真だけを見せても、同じ治療を再現できるとは限りません。出発前に、処方した医師と薬剤師へ確認します。
商品名ではなくGeneric Nameを確認する
薬には、製薬会社が付けたBrand Nameと、有効成分を示すGeneric Nameがあります。同じ有効成分でも、国や製薬会社が変われば商品名が異なることがあります。
たとえば、薬の記録には次の情報を残します。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| Generic Name | 有効成分の正式名称 |
| Brand Name | 日本で処方された商品名 |
| Strength | 1錠当たりの含有量 |
| Form | Tablet、Capsule、Inhalerなど |
| Dose | 1回に使用する量 |
| Frequency | Once dailyなど |
| Indication | 使用している病気・目的 |
Generic Nameが同じでも、含有量や剤形が異なれば、同じ使い方ができるとは限りません。自分で同等品を判断せず、現地の医師または薬剤師へ、日本の処方情報を見せて確認します。
日本で使える薬でも、フィリピンで同じ扱いとは限らない
薬の販売区分や規制は国ごとに異なります。日本では処方箋が必要な薬が、別の国では薬局で販売されている場合があります。反対に、日本から持ち出せても、渡航先では持込みが制限される薬があります。
特に事前確認が必要なのは次の薬です。
- 医療用麻薬
- 向精神薬
- 医薬品である覚醒剤原料
- 睡眠薬や抗不安薬の一部
- ADHD治療薬の一部
- 強い鎮痛薬
- 注射薬
- 冷蔵保存が必要な薬
- 液体量の多い薬
- 針や注射器を伴う薬
薬の分類を商品名だけで判断することはできません。処方した医師、薬剤師、厚生労働省の地方厚生局、フィリピン側の大使館・領事館・関係当局などへ確認します。
日本側の許可だけではフィリピンへの持込みを保証しない
医療用麻薬や一部の薬を日本から持ち出す場合、日本側で許可申請が必要になることがあります。しかし、日本で輸出許可を受けたことは、フィリピン側が同じ薬の持込みを認めることを保証するものではありません。
厚生労働省も、渡航先によって、持込み可能な数量、医師の診断書、英文証明書、事前許可、申告などが必要になる可能性があるため、渡航先の制度を確認するよう案内しています。
薬の規制確認は、出発直前ではなく、留学を決めた段階で始めます。手続きが必要な薬は、申請や書類発行に時間がかかる場合があります。
薬は元の包装のまま持参する
錠剤を無記名の袋や小さなケースへまとめると、何の薬か確認できなくなります。厚生労働省は、海外へ医薬品を持参するときは、PTPシートや薬局から交付された容器など、本来の容器のまま携帯するよう案内しています。
持参する薬には、可能な範囲で次の情報が確認できる状態を残します。
- 本人の氏名
- 薬の商品名
- Generic Name
- 含有量
- 処方した医療機関
- 使用方法
- 処方日
粉薬や一包化された薬は、外見だけで内容を確認しにくくなります。別の剤形へ変更できるか、薬剤情報提供書を添付できるかを、出発前に医師または薬剤師へ相談します。
MEDICATION DOCUMENTS|持参する4種類の書類
- 処方箋または処方内容の写し。薬の名称、含有量、使用方法が分かるものを用意します。
- 薬剤情報提供書。日本語版だけでなく、Generic Nameが分かる形にします。
- 英文のDoctor’s Letter。次の内容を医師に記載してもらいます。
- 患者の氏名と生年月日
- 病名または薬を必要とする理由
- Generic NameとBrand Name
- 含有量、使用回数、投与方法
- 携帯する数量
- 医師の氏名、署名、連絡先
- 発行日
- 必要な許可書。規制対象薬に該当する場合は、日本側とフィリピン側で必要な手続きを確認します。
Health Fileは情報共有に役立ちますが、医師が発行するLetterや政府機関の許可書の代わりにはなりません。
MEDICATION CALENDAR|「何箱」ではなく残日数で管理する
常用薬は、箱数ではなく、あと何日使えるかで管理します。計算する項目は次のとおりです。
- セブ到着日
- 帰国予定日
- 1日に使用する量
- 持参する総量
- 現地で再診が必要になる日
- 薬がなくなる予定日
- 予備として確保する日数
- 日本帰国後の次回受診日
たとえば90日間の留学でも、移動日の遅延、帰国便の変更、薬の破損などが起こる可能性があります。一方、必要以上に大量の薬を持ち込めるとは限りません。予備量を含めた総量が法的に持込み可能か、医師と関係当局へ確認します。
WEEKLY CHECK|毎週1回、薬の残りを確認する
薬がなくなる直前に気づいても、すぐ再処方できるとは限りません。毎週同じ曜日に次の内容を確認します。
| 確認項目 | 記録 |
|---|---|
| 残日数 | あと何日分あるか |
| 飲み忘れ | 何回あったか |
| 紛失・破損 | ないか |
| 保管状態 | 高温、湿気、冷蔵状態 |
| 次回受診 | 予約が必要か |
| 体調変化 | 副作用と思われる変化がないか |
薬の不足が予想されたら、なくなる前に日本の主治医、保険会社、学校Clinic、現地医療機関へ相談します。
セブの薬局で同じ薬を見つけても自己判断で替えない
セブには多くのPharmacyがありますが、在庫は店舗によって異なります。同じGeneric Nameが表示されていても、次の違いがあります。
- Strength
- Dosage form
- Release type
- Combination ingredients
- Manufacturer
- Storage requirements
- Prescription requirements
「成分名が同じだから大丈夫」と考えず、日本の処方内容を医師または薬剤師へ見せます。特に徐放錠、配合薬、吸入薬、インスリンなどは、名称だけで同じ使用法とは判断できません。
また、抗菌薬、睡眠薬、鎮痛薬などを、友人からもらったり、自己判断で追加したりしないでください。
薬がなくなったときの順序
常用薬が不足しそうな場合は、次の順序で対応します。
- 薬のGeneric Name、Strength、残量を確認する
- 日本の処方箋とDoctor’s Letterを準備する
- 学校Clinicまたは学生サポートへ連絡する
- 保険会社へ受診先と補償を確認する
- 現地の医師へ診療情報を見せる
- 現地の処方箋で正規のPharmacyから購入する
- 新しい薬の名称と処方内容をHealth Fileへ追加する
日本から家族に薬を郵送してもらう方法を、最初の選択肢にはしません。薬の種類によっては、郵送による輸出入が認められない、通関で止まる、温度管理ができないなどの問題があります。
STORAGE|セブの高温多湿を前提にする
セブでは、屋外、寮、停電時、移動中で保管環境が変わります。薬ごとに次の項目を確認します。
- 室温保存か
- 冷蔵が必要か
- 凍結を避ける必要があるか
- 光を避ける必要があるか
- 湿気に弱いか
- 開封後の使用期限
- 停電時に何時間まで保管できるか
「冷蔵」と書かれていても、冷凍室や保冷剤へ直接接触させてよいとは限りません。インスリンなど温度管理が必要な薬は、医師、薬剤師、メーカーの保存条件を確認します。
学校には入学前に、次の点を質問します。
- 医薬品を保管できる冷蔵設備があるか
- 温度を確認できるか
- 停電時のバックアップがあるか
- 他の学生が触れない状態で保管できるか
食堂の共有冷蔵庫へ無断で保管する方法は適切ではありません。
機内持込みと預け荷物
常用薬は、飛行中や到着直後に必要になる可能性があります。CDCは、薬を元のラベル付き容器で携帯し、処方箋の写しを持つよう案内しています。
薬、処方箋、Doctor’s Letter、必要な許可書は、すぐ提示できる形で機内持込み手荷物に入れます。液体薬、注射器、針、保冷用品、電池を使う医療機器は、航空会社と空港保安検査の条件を事前に確認します。
預け荷物は、遅延、紛失、温度変化が起きる可能性があります。薬をどのように分けるかは、薬の性質と持込み規則を確認したうえで、医師や薬剤師へ相談します。
薬を紛失したときにしてはいけないこと
薬を紛失しても、次の行動は避けます。
- 同じ色や形の薬を購入する
- 友人の薬をもらう
- 2回分をまとめて使用する
- 急に服用を中止する
- 日本から無申告で送ってもらう
- SNSだけで代替薬を決める
薬によっては、急な中止や重複使用が危険になる場合があります。残っている薬の写真、処方箋、Health Fileを準備し、医師または薬剤師へ相談します。
参考情報
情報確認日:2026年8月29日
主な確認先:
厚生労働省 麻薬取締部|麻薬・覚醒剤原料などを携帯して日本を出入国する方へ
フィリピン税関|Guidelines on Arriving Travelers
CDC|Traveling Abroad with Medicine
CDC Yellow Book|Traveling with Prohibited or Restricted Medications
WHO|International Travel and Health
※薬の持込み、処方、販売、保管条件は、薬の種類と渡航時点の制度によって異なります。医師、薬剤師、航空会社、関係当局へ確認してください。この記事は個別の薬の変更、購入、服用、中止を指示するものではありません。