セブで診察や検査を受けた後は、「検査結果は病院に残っているから大丈夫」「帰国後、日本の医師がセブの病院へ問い合わせれば分かる」「領収書があれば、保険請求も診療の引継ぎもできる」と考えがちです。
しかし、帰国後に同じ症状が出た場合、日本の医師は、セブで何を疑い、どの検査を行い、どの薬を使ったのかを知る必要があります。保険会社が必要とする書類と、日本の医師が必要とする記録も同じではありません。
帰国後にセブの病院へ書類を依頼すると、本人確認、同意書、医師の署名、受取り方法などの手続きが必要になる場合があります。必要なのは、書類を一枚だけ持ち帰ることではなく、診察、検査、処方、支払いを日付順のMedical Timelineとして残すことです。
要点
退院時または帰国前に、Medical Certificate、Clinical Summary、Laboratory Results、Imaging Data、Prescription、Billing Documentsを確認し、受診から回復までを日付順に整理します。必要な書類名、発行料金、完成日、受取方法はMedical Records Sectionへ早めに確認してください。
帰国前にそろえるMedical Record
すべての受診で同じ書類が発行されるわけではありません。検査や処方を受けていなければ、該当する記録はありません。まず、自分が受けた診療に応じて必要な記録を確認します。
受診ごとに受け取る6種類の記録
| 記録 | 主な用途 |
|---|---|
| Medical Certificate | 診断、受診日、療養の証明 |
| Clinical Summary | 症状、診察、治療経過の引継ぎ |
| Laboratory Results | 血液・尿などの検査結果 |
| Imaging Data | X-ray、CT、MRI、超音波など |
| Prescription | 薬の名称、用量、使用方法 |
| Billing Documents | 保険請求と支払い証明 |
診断書と診療要約は同じではない
Medical Certificateは、受診した事実や診断、療養期間などを証明するために使われます。一方、Clinical SummaryやDischarge Summaryは、医療者が治療経過を引き継ぐための情報を含みます。
| 書類 | 主な内容 |
|---|---|
| Medical Certificate | 患者名、受診日、診断、休養期間 |
| Clinical Summary | 症状、診察所見、検査、治療、今後の計画 |
| Discharge Summary | 入院理由、入院中の経過、退院時の薬、再診指示 |
| Fit-to-Fly Certificate | 航空機利用についての医師の判断 |
| Fit-to-Class Certificate | 授業復帰についての医師の判断 |
学校へ欠席を証明する書類と、日本の医師へ治療経過を説明する書類は、目的が異なります。「Medical Certificateをください」だけで終わらせず、何に使うのかを伝えます。
検査結果は検査日と基準値ごと残す
血液検査や尿検査を受けたら、画面を見せてもらうだけで終わらせず、結果の写しを受け取ります。確認する項目は次のとおりです。
- 患者の氏名
- 検査日と採取時刻
- 検査項目
- 結果
- 単位
- Reference Range
- 検査施設名
- 医師の説明
- 再検査の予定
同じ検査名でも、単位やReference Rangeが異なる場合があります。数値だけをメモすると、日本の医師が正しく比較できない可能性があります。検査結果にHやLの表示があっても、一つの数値だけで病気を自己診断せず、症状、検査時期、ほかの検査結果と合わせて医師の判断を確認します。
一度の検査結果だけを「正常」として保存しない
感染症などでは、症状が始まってからの日数によって検査結果が変わる場合があります。再検査を受けたときは、最新の結果だけを残すのではなく、すべてを日付順に保存します。
- Day 1|発熱開始
- Day 2|初回診察
- Day 3|血液検査
- Day 4|再検査
- Day 6|症状改善
- Day 7|授業復帰許可
数値の変化が分かれば、日本の医師も経過を確認しやすくなります。
画像検査はデータと読影レポートをそろえる
X-ray、CT、MRI、超音波などの検査を受けた場合は、画像そのものとRadiology Reportの両方を確認します。
画像データとRadiology Reportを確認する
- 画像そのもの:Digital File、CD、USB、Patient Portalなど、医療者が確認できる形式で受け取ります。
- Radiology Report:画像を読影した医師の所見を文書で受け取ります。
スマートフォンでモニターを撮影した写真だけでは、画像の細部、患者情報、撮影条件を確認できない場合があります。日本で再診する予定があることを伝え、元の画像データと読影レポートを受け取れるか確認します。
Can I receive the original imaging data and the radiology report?
元の画像データと読影レポートを受け取れますか?
データの形式がDICOMか、専用ソフトが必要か、海外の医療機関でも開けるかも聞きます。
処方薬は商品名だけで持ち帰らない
処方薬については、薬の箱や袋だけでなく、次の内容を保存します。
- Generic Name
- Brand Name
- Strength
- Dose
- Frequency
- Route
- 使用開始日
- 使用終了予定日
- 使用理由
- 副作用やアレルギー反応
- 処方した医師
薬の箱や袋だけでは、使用方法や治療目的が分からない場合があります。帰国前に薬が終わった場合も、処方記録は捨てないでください。「この薬を使用して症状が改善した」「この薬の後に発疹が出た」という経過を日本の医師へ伝える資料になります。
保険請求用の書類を分けて保存する
保険請求には、医学的な記録だけでなく、支払いを証明する書類が必要です。一般的に保存するのは次の書類です。
- Official Receipt
- Itemized Billing Statement
- Medical Certificate
- Doctor’s Report
- Prescription
- Pharmacy Receipt
- Laboratory Receipt
- Imaging Receipt
- 病院までの交通費領収書
- 保険会社の受付番号
Official Receiptには、患者名、医療機関名、日付、金額が記載されているかを確認します。カード利用明細だけでは、何の治療に支払ったかを証明できない場合があります。原本提出が必要な保険契約もあるため、提出前に全ページを撮影またはスキャンします。
Medical Timelineを1枚にまとめる
書類を検査別に保存するだけでなく、最初のページに時系列を作ります。以下は架空の記載例です。
| 日付 | 出来事 | 医療機関・記録 |
|---|---|---|
| 8月10日 | 38.4°Cの発熱、頭痛 | 学校Clinicへ連絡 |
| 8月11日 | 病院受診、血液検査 | Consultation、CBC |
| 8月12日 | 嘔吐、腹痛なし | 自宅療養 |
| 8月13日 | 再診、血液再検査 | 2回目のCBC |
| 8月15日 | 解熱、食事可能 | 医師の経過確認 |
| 8月17日 | 授業復帰 | Medical Certificate |
Timelineには診断を自分で追加せず、医師から説明された内容と、実際に起きた事実を分けて書きます。
帰国前にMedical Records Sectionへ確認する
検査を受けた部署だけでは、すべての書類を発行できない場合があります。病院のMedical Records Sectionへ、必要な書類と手続きを確認します。
| 確認するときの英語 | 日本語 |
|---|---|
| What documents can I request before I return to Japan? | 日本へ帰国する前に、どの書類を請求できますか? |
| Do I need my attending physician’s signature? | 担当医師の署名が必要ですか? |
| How many working days will processing take? | 発行まで何営業日かかりますか? |
| Can I receive a digital copy? | Digital Copyを受け取れますか? |
| Can an authorized person collect the documents for me? | 代理人が受け取れますか? |
Chong Hua Hospitalは、Medical Records Sectionで診療記録やMedical Certificateの写しを発行できると案内しています。情報開示同意書や医師・患者の署名が必要となり、書類によっては申請から3〜5営業日かかると案内されています。帰国前日に依頼しても、出発までに受け取れない可能性があります。
代理人へ依頼する場合
帰国後に学校スタッフや友人へ受取りを依頼する場合、本人の口頭依頼だけでは発行されない可能性があります。病院へ次の書類が必要か確認します。
- Authorization Letter
- 本人のIDまたはPassport Copy
- 代理人のID
- Release of Information Consent
- 申請書
- 医師の署名
- 受取手数料
誰にでもHealth Recordを渡せるわけではありません。代理人へ渡す情報の範囲と、受取り後の送付方法も決めます。
Medical Recordを安全に扱う
学校のGroup Chatへ送らない
フィリピンのData Privacy Actは、個人情報の保護を定めています。医療情報は、特に慎重に扱うべきSensitive Personal Informationです。検査結果や診断書には、氏名、生年月日、住所、病名、Passport情報などが含まれる場合があります。
次の保存方法は避けます。
- クラス全員が見られるGroup Chatへ送る
- SNSへ診断書を掲載する
- 共用パソコンへ保存したままにする
- パスワードのない共有Linkを作る
- 不要な相手へPassport Copyと一緒に送る
学校へ欠席証明を出す場合も、Medical Record全体ではなく、必要なMedical Certificateだけでよいか確認します。保険会社、学校、日本の医師へ、それぞれ必要な範囲だけを提出します。
原本・Offline・Cloudの3か所へ保存する
- 原本:診断書、領収書、検査結果を日付順に保管します。
- Offline Data:スマートフォンまたはパソコンに、通信がなくても開けるPDFとして保存します。
- Secure Cloud:端末の紛失に備え、適切なAccess ControlがあるCloudへ保存します。
ファイル名は、2026-08-13_CBC_ChongHuaのように、日付、検査名、医療機関を入れます。「IMG_8241」のような名前のままでは、帰国後に必要な記録を見つけにくくなります。
日本の医師へ伝える5項目
帰国後に受診するときは、書類を渡すだけでなく、次の5項目を説明します。
- セブで最初に起きた症状
- 症状が始まった日
- 受けた検査と結果の変化
- 使用した薬と反応
- 現在も残っている症状
I developed a fever in Cebu on August 10.
8月10日にセブで発熱しました。
I had two blood tests, three days apart.
3日間隔で2回血液検査を受けました。
I still feel tired after returning to Japan.
帰国後も疲労感が残っています。
日本語で説明するときも、Medical Timelineがあれば日付を正確に伝えられます。
参考情報
情報確認日:2026年8月29日
主な確認先:
National Privacy Commission|Data Privacy Act of 2012
National Privacy Commission|Protecting Patient Data
Chong Hua Hospital|Patients & Visitors Guide
Chong Hua Hospital|Medical Records FAQ
DOH Hospital|Patient’s Rights and Medical Records
University of Cebu Medical Center|Contact Departments
医療記録の種類、発行日数、料金、受取条件は医療機関によって異なります。帰国日が決まったら早めにMedical Records Sectionへ確認してください。この記事は一般的な情報提供を目的としており、検査結果の医学的な解釈に代わるものではありません。