こんにちは、CebuOです。
要点
セブ空港ターミナル2(T2)の特徴は、30mスパンの集成材アーチを繰り返した、波を思わせる大屋根です。木材は屋根を支える構造に使われ、自然光を取り込む開口や深い軒と組み合わせることで、熱帯のリゾートを意識した空間をつくっています。建物全体が木だけでできているわけではなく、木構造、金属の屋根材、ガラス面などを組み合わせた建築です。
リゾートへの入口を建物で表現したT2
マクタン・セブ国際空港のT2を特徴づけているのは、館内から見える木質のアーチと、外観を形づくる屋根の起伏です。Arupは、そのうねりをマクタン島周辺の海や波と結び付けて説明しています。海を図柄として壁に描くのではなく、建物を覆う大きな輪郭に取り込んでいるところが、この空港を理解する手掛かりになります。Arupのプロジェクト解説
設計の中心を担ったのは、香港のIntegrated Design Associates(IDA)です。設計者は、フィリピンの熱帯住宅を思わせる高い屋根と低い軒を採り入れ、交通施設でありながらリゾートらしさを感じられる場所を目指したと説明しています。その狙いは、内装の色や装飾だけに表れるものではありません。屋根の高さ、光の入り方、外部への見通しまでを一緒に見ると、設計の考え方がつながります。IDA提供の建築解説
30mの集成材アーチが広い空間を支える
屋根の骨組みに使われているglulamは、木材を積層・接着してつくる集成材です。T2では、曲線を持つ大きな部材を連続させ、30mのスパンを架け渡しています。スパンとは支点間の距離を指し、アーチに沿って測る木材の長さとは別の数値です。木の表情が見える部分を、単なる天井の飾りではなく、荷重を支える骨組みとして捉えると、建物の見方が変わります。
木構造を担当したRubnerは、この屋根のために4,500m³の集成材を供給したと公表しています。大きなアーチによって、内部の柱をできるだけ少なくすることが設計上の狙いでした。空港ではカウンター、待機列、歩行のための空間が必要になるため、骨組みがどこで屋根を支えるかは、人が使える空間の広がりにも関わります。Rubnerの施工実績・Arupの屋根構造説明
数字を見る際は、その対象を区別しましょう。30mはスパン、4,500m³は供給された集成材の体積であり、建物の幅や床面積を表す数値ではありません。アーチが繰り返されるリズムと、その下に生まれる空間を対応させて見ることが、専門知識がなくてもできる建築の読み方です。
木材と金属で異なる役割を受け持つ屋根
「木の屋根」という呼び方から、雨に接する表面まで木材だと思うかもしれません。しかし、屋根を支える骨組みと、外側を覆う屋根材は別の部材です。屋根材メーカーElval Colourは、この空港に塗装アルミニウム板のorofeを使用した事例を公開しています。木質のアーチと金属の外皮は、同じ屋根の中で異なる役割を受け持っています。Elval Colourの空港施工事例
同社は、波状の形に沿う滑らかな曲面と、日中の熱への対応を設計上の課題として挙げています。室内から見上げる木の骨組みと、建物の外側で見る屋根の曲線を比べると、材料を一種類に統一するのではなく、それぞれの性質を使って一つの形にまとめたことが分かります。木材の採用だけで建物全体の性能を説明するよりも、構造と表面を分けて考えるほうが正確です。
採光と深い軒で光の入り方を調整する
設計者の説明では、アーチの頂部に自然光を取り込むトップライトを設け、屋根の谷に当たる部分へ空調ダクトを組み込んでいます。曲面の高い部分を採光、低い部分を設備の納まりに使うことで、屋根の形と建物の機能を結び付けています。高い天井を見上げるときは、木の曲線だけでなく、その間の光が入る部分にも注目するとよいでしょう。IDAによる採光・設備の説明
一方、屋根の端では、張り出した軒がガラス面を守ります。Arupが説明する高い屋根と低い軒の組み合わせは、光を取り込むことと、日射やまぶしさを抑えることの両立を目指したものです。これは、開口を大きくして明るくするだけの考え方とは異なります。上方から入る光と、軒の下にできる陰を一緒に見ると、リゾートらしい開放感を気候への対応と結び付けて理解できます。Arupの熱帯建築に関する説明
工場でつくった大型部材をマクタンで組み立てる
大きな木の曲線には、製作と輸送の工夫もあります。Rubnerによると、アーチを構成する長さ23mの半分の部材を工場で製作し、3回に分けてフィリピンへ輸送しました。マクタン島ラプラプ市での組立ては、同社の監督下で3か月かけて行われています。この期間は木構造部材の組立てについての説明であり、ターミナル全体を3か月で建設したという意味ではありません。Rubnerの製作・輸送・組立て記録
接合部には、島の環境に合わせた検討も必要でした。ねじを供給したSchmid Schraubenは、塩分を含む空気と高い湿度による腐食、とくに露出したねじ頭への影響を課題として挙げています。同社はRubnerと共同で、特殊な表面処理などの対応を開発したと説明しています。旅客の目には木の面が大きく映りますが、その形を保つために金属の接合部にも工夫が施されています。Schmid Schraubenの技術事例
また、Rubnerの担当者は、地震時の動きに対応する継ぎ目と、主要な梁をコンクリート構造へ固定する部分を課題に挙げています。これは、木材を使えば自動的に耐震性が決まるのではなく、異なる部材のつなぎ方まで含めて設計する必要があることを示しています。完成した曲線の美しさは、材料選びと接合の検討を重ねた結果として見ることができます。
旅客動線と複数の専門分野をまとめた設計
T2は、出発施設を上層、到着施設を地上・中間層に配置した3層の建物です。IDAは、屋根の方向と車寄せ側から航空機側への見通しが、旅客に進行方向を感じさせる設計だと説明しています。空間が開けていることは、見た目の印象だけでなく、自分がどちらへ進むかを理解する助けにもなる、という考え方です。IDAの旅客動線に関する解説
設計に関わる仕事は、建築家だけで完結しません。Arupは航空計画、構造、設備など幅広い分野を担当し、BIMと呼ばれる建物の情報モデルを用いて検討を進めています。同社は、管制塔からの視線とターミナルの高さの関係も3Dモデルで確認した例を紹介しています。旅客が見上げる屋根の高さにも、空港全体を機能させるための条件が関わっているのです。Arupの設計調整・BIM解説
2019年のWAF受賞と、館内で見るポイント
T2は2019年のWorld Architecture Festival(WAF)で、完成建築のTransport部門を受賞しました。空港公式の告知と、同年12月5日のCebu Daily Newsがこの部門受賞を伝えています。「世界一の空港」というサービス全般の順位ではなく、建築賞のどの部門を、いつ受賞したのかを押さえると、その評価の意味が明確になります。MCIA公式受賞告知・Cebu Daily Newsの受賞報道
搭乗手続きの合間に見るなら、木のアーチ、頂部の採光、外周の軒という順で視線を動かすと、形と機能を結び付けやすくなります。さらに、同じ形が繰り返される方向をたどり、下に広がる旅客空間との関係を見てみましょう。細部をすべて探す必要はなく、普段は一つの天井として見ているものを、支える部分、光を入れる部分、外部を覆う部分に分けるだけでも理解が深まります。
設計・施工・受賞資料の情報確認日:2026年9月9日。構造や製作の数値は各社の当該プロジェクト資料、受賞年は2019年の発表に基づきます。
まとめ
セブ空港T2のリゾートらしさは、30mの集成材アーチ、金属で覆う波状の屋根、トップライト、深い軒を組み合わせて生まれています。木材の温かみと大きな空間を楽しみながら、光や熱への対応、接合部、旅客の移動にも目を向けると、外観だけでは分からない工夫が見えてきます。T2は、空港の機能とマクタンらしい景観を同じ建物の中で表現した建築として理解できます。
よくある質問
セブ空港T2は建物全体が木造なのですか?
特徴的な屋根の骨組みに集成材を使っていますが、建物全体が木だけでできているわけではありません。コンクリート構造への固定部分や金属の屋根材など、異なる材料を組み合わせています。
30mという数字は屋根の高さですか?
30mは集成材アーチのスパンで、支点間の距離を示します。屋根の高さや曲線に沿った部材長とは異なる数値です。
セブ空港T2はどの建築賞を受賞しましたか?
2019年のWorld Architecture Festivalで、Completed BuildingsのTransport部門を受賞しました。空港の運航や接客を順位付けした賞ではなく、完成した交通施設の建築を対象とする部門です。