野生動物は、旅行者の撮影に合わせて行動しているわけではありません。 人や船が追いかける、進路をふさぐ、周囲を囲む、餌で同じ場所へ集めるといった行為は、動物の移動、採餌、休息、呼吸などへ影響する可能性があります。 この記事では、セブで海洋生物ツアーを選ぶとき、料金や遭遇率ではなく、動物との距離と運営方法から判断する基準を解説します。
結論
結論|「必ず見られる」より「見られない日がある」を選ぶ
野生動物を尊重するツアーには、次の特徴があります。
- 野生なので見られない場合があると説明する
- 動物へ餌を与えない
- 人や船から動物へ近づきすぎない
- 動物が離れたら追わない
- 一度に近づく船や参加者の数を制限する
- 観察時間を制限する
- 接触やフラッシュ撮影を禁止する
- 動物の進路と浮上経路を空ける
- 海へ入る前に環境ルールを説明する
- 違反する参加者をガイドが止める
反対に、「100%会える」「触れる距離まで連れていく」「写真が撮れるまで追う」という説明は注意が必要です。 野生動物が現れなかった場合に、無理に探し回らず終了できるツアーの方が、動物への負担を抑えられます。
フィリピンには海洋生物観光の全国指針がある
フィリピンでは2020年、観光省、農業省、内務自治省、環境天然資源省の4省庁が、海の野生生物観光Interactionsに関する共同覚書Circular No. 01を制定しました。 この指針は、自然の海で行われる海洋生物観光を対象とし、動物と観光客の安全、生息地の保護、持続可能な観光を目的としています。 観察区域は、主に次のように分けて管理されます。
- 接近も交流も認めない区域
- 規則に従って観察する区域
- 船が順番を待つ区域
観光客や船が一度に動物へ集中しないよう、種類ごとに距離、船の数、観察時間、入水人数などを管理する考え方です。 動物を苦しめる、追い回す、傷つける、生息地を壊す行為も禁止されています。
海洋生物ごとに見るべきポイントは違う
ジンベエザメ、ウミガメ、イルカは、すべて同じ方法で観察できるわけではありません。
| 海洋生物 | 特に注意する行動 |
|---|---|
| ジンベエザメ | 餌付け、接触、船や人による包囲 |
| ウミガメ | 接触、追跡、浮上経路の妨害 |
| イルカ | 船による追跡、進路妨害、群れの分断 |
| クジラ類 | 親子への接近、長時間の追跡 |
| サメ・エイ類 | 餌付け、尾や進行方向への接近 |
「近づかない」という原則は共通しています。しかし、必要な距離や観察方法は、動物の種類と地域の規則によって異なります。 現地ガイドの説明が、「触らないでください」だけで終わっていないか確認しましょう。
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ジンベエザメツアーは餌付けの有無を見る

ジンベエザメは世界最大の魚ですが、動物プランクトンや小魚などを食べる濾過摂食者です。 セブ南部のオスロブは、ジンベエザメを間近で見られる場所として世界的に知られています。一方で、観光のために餌を与え、同じ海域へ誘導する運営方法について、研究者や保護団体から長期的な影響が指摘されています。 オスロブで2015年から2017年に行われた水中観察研究では、給餌場所を頻繁に訪れる個体ほど人を避けにくくなり、調査の93%で人がジンベエザメから2メートル未満まで接近していました。
別の研究では、2012年から2015年に確認された152個体のうち、94.7%に少なくとも一つの傷があり、頻繁に給餌場所を訪れる個体ほど傷が多い傾向が報告されています。 ただし、すべての傷が観光だけによるものと断定されたわけではありません。研究では、船、ロープ、プロペラとの接触など、給餌場所周辺での継続的な近接がリスクとして指摘されています。
餌付けをどう判断する?
餌付けには、旅行者が高い確率で動物を見られること、地域に雇用と収入を生み出すことなどの側面があります。 しかし、野生動物を人や船に慣れさせ、自然な行動、移動、滞在時間を変える可能性があります。 2025年にはボホール州が、餌付けを伴うジンベエザメ観光を規則違反として停止しました。2026年に同州が強化した海洋生物観光条例でも、ジンベエザメへの餌付けと接触は禁止されています。 旅行者が責任あるツアーを優先するなら、次の順番で選んでください。
- 餌を使わず、自然に現れる個体を観察する
- 遭遇を保証しない
- 観察時間と参加人数を制限する
- 動物が近づいても人からは接近しない
- 動物が離れたら追跡しない
「確実に見られる」ことと、「自然な状態を観察できる」ことは同じではありません。

ウミガメは呼吸のために水面へ上がる
ウミガメは魚ではなく、肺で呼吸する爬虫類です。水中にいても、呼吸のため水面へ上がる必要があります。 旅行者がウミガメの上を囲んだり、進行方向へ集まったりすると、水面へ上がる経路をふさぐ可能性があります。 モアルボアルでは、海洋生物への接触が条例で禁止されています。2024年に観光客がウミガメへ触れた動画が問題となった際、自治体は違反者に₱2,500の罰金を科す規定があると改めて注意を促しました。 ウミガメを観察するときは、次の行動を守ってください。
- 触らない
- 甲羅へ乗らない
- 横や後ろから追いかけない
- 水面への進路を空ける
- 真上を泳がない
- 食事中や休息中に近づかない
- 前方を参加者で囲まない
- フラッシュを使わない
- 餌を与えない
ウミガメから近づいてきても、手を伸ばさず動かずに待ちます。動物が自分で距離を選べることが重要です。

イルカは船で追い込まない
セブ西側とネグロス島の間にあるタニョン海峡など、セブ周辺ではイルカやクジラ類が確認されています。 イルカウォッチングでは、観光客が海へ入らなくても、船の動きが動物へ影響します。 注意したいのは、次のような運転です。
- 高速で群れへ接近する
- 複数の船で囲む
- 群れの正面へ回り込む
- 親子の間へ入る
- 群れを分断する
- 進行方向を繰り返し横切る
- 潜った場所を旋回し続ける
- 動物が離れても追跡する
フィリピンの全国指針に基づく小型・大型鯨類の専用観察ツアーでは、船上からの観察が基本で、水中へ入る活動は禁止されています。 「イルカと泳げる」と宣伝している場合は、その地域で正式に認められた活動なのか、適用される規則は何かを予約前に確認してください。
子どものいる群れには近づかない
ジンベエザメ、イルカ、ウミガメなどを観察するとき、幼い個体や親子がいる場合は、通常以上に距離を取る必要があります。 親と子の間へ船や泳者が入る、休息している個体を動かす、進路をふさぐ行為は避けます。 動物が次のような反応を見せたら、接近をやめるべきサインです。
- 急に方向を変える
- 潜水を繰り返す
- 速度を上げて離れる
- 尾やひれを強く動かす
- 群れが分散する
- 呼吸の間隔が変わる
- 人や船を避け続ける
「まだ写真が撮れていない」という理由で追跡を続けてはいけません。
関連記事:オスロブはツアーと自力どちらが正解?料金・待ち時間・前泊を比較
良いガイドは写真より先にルールを説明する

責任あるガイドは、海へ入る前や船が動き出す前に、次の内容を説明します。
- 観察できる動物の種類
- 動物が現れない可能性
- 近づける範囲
- 観察できる時間
- 一度に入水できる人数
- 接触禁止
- 餌付け禁止
- フラッシュ禁止
- 動物の進路を空ける方法
- 違反した場合の対応
- 緊急時の連絡方法
説明がないまま、「見えたらすぐ飛び込んで」と案内するツアーは避けましょう。 また、参加者が動物へ触れているのにガイドが止めない場合は、安全管理と環境管理の両方に問題があります。
カメラが動物との距離を縮めてしまう
海洋生物観光では、写真を撮ること自体が悪いわけではありません。 しかし、スマートフォンやアクションカメラの画面だけを見ていると、自分の体、フィン、船が動物へ近づいていることに気づきにくくなります。 撮影するときは、次の点を守ってください。
- ズームや広角機能を使う
- 自撮りのために動物へ背中を向けない
- ガイドより前へ出ない
- 動物を画面中央へ入れるため追いかけない
- フラッシュや強い照明を使わない
- 長時間一個体を撮り続けない
- 動物より周囲の人と船を先に確認する
良い写真が撮れなくても、動物が自然に泳ぎ去ったなら、その観察は成功です。
SNSの写真からツアー会社を見分ける
予約サイトやSNSに掲載されている写真は、ツアー会社の運営姿勢を判断する材料になります。 次の写真が多い場合は注意してください。
- 旅行者がウミガメへ触れている
- ジンベエザメの進路を人がふさいでいる
- 動物を複数人で囲んでいる
- イルカのすぐ横を船が高速で走っている
- 魚や動物へ餌を与えている
- サンゴの上に立って撮影している
- ガイドが動物を押さえている
- 一個体の周りに大勢が集まっている
「映える写真」が多いことと、責任あるツアーであることは別です。 事業者自身が接触写真を広告に使っている場合、現場で接触を止める可能性は高くないと考えられます。
予約前に聞く10の質問
海洋生物ツアーを予約するときは、次の内容を確認してください。
- 野生動物へ餌を与えますか
- 遭遇できない場合もありますか
- 一度に何人が海へ入りますか
- 動物との距離はどう管理しますか
- 観察時間に上限がありますか
- 接触した参加者をガイドが止めますか
- イルカ観察で海へ入りますか
- 船が動物を追跡しない規則がありますか
- 自治体や保護区の許可を受けていますか
- ツアー前に環境説明がありますか
「心配ありません」「安全です」「必ず近くで見られます」だけでは、十分な回答ではありません。 距離、人数、時間、餌付け、許可について具体的に説明できる事業者を選びましょう。
関連記事:6〜10人のグループで使いやすいセブの場所10選|席・予約・集まりやすさで選ぶ
参加中に違反を見つけたら
ジンベエザメへ近づかなければ餌付けツアーでも問題ありませんか?
旅行者個人が距離を守ることは重要です。しかし、餌付け自体が動物の行動や滞在パターンを変える可能性があります。より自然な観察を優先するなら、餌を使わず、遭遇を保証しないツアーを選びましょう。
ウミガメから近づいてきた場合は触ってもよいですか?
触ってはいけません。その場で静止し、ウミガメが自分で離れられる空間を確保してください。
イルカと一緒に泳げますか?
フィリピンの全国指針に基づくイルカやクジラ類の専用観察ツアーでは、水中へ入る活動は禁止されています。船上から観察し、地域の規則に従ってください。
海洋生物が見られなかったら返金されますか?
返金や振り替えの条件は事業者によって異なります。予約前に確認してください。ただし、野生動物ツアーで遭遇を保証しないこと自体は、悪い条件ではありません。
ガイドが触っても大丈夫と言ったら触れますか?
触らないでください。地域の条例や全国指針に反する可能性があります。ガイドの口頭説明より、自治体や保護区の正式な規則を優先しましょう。
ほかの参加者が動物へ触れたり、追いかけたりしている場合は、まずガイドへ知らせてください。 危険な状況で旅行者同士が水中で直接争うと、事故につながる可能性があります。船へ戻ってから、時間、場所、船名、ツアー会社、行為の内容を記録します。 写真や動画を撮影する場合は、自分が動物へ近づかないことを優先してください。 自治体、観光事務所、海洋保護区の管理者などへ報告するときは、感情的な投稿だけで終わらせず、確認できる事実を伝えることが重要です。
関連記事:タニョン海峡は全長160km|13種のクジラ類と5万人の漁業者を支える海
まとめ|近さではなく、動物が離れられるかで選ぶ
責任ある海洋生物観光は、旅行者を動物へどれだけ近づけるかではなく、動物が人や船から自由に離れられるかで判断します。 餌で集めない、追わない、囲まない、触らない、進路をふさがない。これが、ジンベエザメ、ウミガメ、イルカを観察するときの基本です。 見られない日があり、写真を撮れず、動物がすぐ泳ぎ去ることもあります。しかし、それが本来の野生動物観察です。 「必ず見られるツアー」ではなく、「見られなくても追わないツアー」を選ぶ。 その選択が、セブの海洋生物と観光を将来まで残すことにつながります。
情報確認日:2026年8月29日参考情報:
- フィリピン内務自治省|共同覚書Circular No. 01 s. 2020
- フィリピン生物多様性管理局|海の野生生物観光Interactions
- 海の野生生物腕時計of theフィリピン|観察野生生物Responsibly
- フィリピン情報庁|ジンベエザメとのふれあいアクティビティinボホールSuspended
- ボホール州政府|Enhanced海の野生生物保護条例
- Royal Societyオープン科学|Effects of Provisioning onジンベエザメBehaviour inオスロブ
- Aquatic保全|Scarring Patterns ofジンベエザメatオスロブ
- NOAA|Hands to Yourself
判断の結論
近さではなく、動物が自分で離れられる観察条件かどうかで選びます。